逗子さんぽ 「天照大神社」
小坪漁港から細い路地を歩く。
逗子市小坪の4丁目、ちょっと狭いこの道は「くねくね」と迷路のようでおもしろい。
昔は小坪千軒(=小坪には千軒の家があるという意味)と言われたように、漁業の村として活躍したんだそう。
「キョロキョロ」あちこち見渡すと、それもそのはず、昭和な雰囲気が漂っていて、「ふふふ」胸が弾んでくるのが分かる。
来た道をときおり振り返ってみると、逗子マリーナが「どどん」と遠望できて、その美しさに何度も目を奪われてしまう私がいるのです。
さて、そんな住宅地の中にスラリと伸びた急な階段を発見。
その先に佇む石碑を見つけます。
「天照大神社」
そう刻まれた石碑の横には、古い庚申塔(天保3年(1832年)銘)もありました。
住宅地の中心地に神社があるなんて。
大抵のことに足踏みなんてしない私ですが、これほどまでに急な階段はなかなかのもの、久しくお目にかかったような気がします。
ちょっと躊躇しながらも、「よし!」と腹を括り、上り始めることに。
その日は「ジリジリ」と照りつける日差しも強く、一段、また一段と上るごとに汗が滲む。
両脇には、ちゃんと手すりも付いてはいるけれど、手すりは使わずに懸命に上る。
「ふぅふぅ」少し息を切らしながらも、きっと頂きに到着したらば拝めるであろう絶景を期待して、なんとか上り切ることに成功。
「ヤッホーーーーーーーーーーーーーー」
全身の力を込めて思わず叫びたくなる高度と、一幅の絵のような逗子マリーナの全景が美しすぎて…
こ、これはたまりません。
こんなロケーションの神社はかなり稀のような気がします。
ただ、もしもやまびこが返ってきたらちょっと怖いな、と思うほど鬱蒼とした雰囲気も否めません。
だから、少しだけ「どきどき」しながらお社さんに向かいます。
天照大神社は小坪神明宮と呼ばれ、室町時代初期にはあった古社なんだそう。
その名の通り、祭神は天照大御神(アマテラスオオミカミ)。
ここにもおられるのですね、大神様、素敵です。
黄梅院蔵康安弐年(1362年)の文書に「小坪神明神畑壱枚と見ゆ」とあり、また、新編相模国風土記稿(天保12年(1841年)成立)には「神明宮 村の鎮守なり、仏乗院持下同じ」とあることから、古くから小坪の鎮守であったことがうかがえる。
山頂からは小坪の町がよく見渡せて、きっと静かに見守ってくださってきたのでしょう。
ちなみにこちらの境内の裏手は、披露山庭園住宅の北側の端あたりと繋がっていて、披露山庭園からも参拝することができるので、あの心臓破りの階段を回避することもできるんですって。
そう考えると、小坪漁港の住宅地入り口あたりから、披露山庭園住宅に上る、1番の近道かもしれませんね。
鎌倉界隈の社寺をたくさん見てきた私ですが、ここ「天照大神社」は、実はかなりレアで穴場、だけどとてもおすすめしたい神社のひとつとなりました。
あの逗子マリーナの全景は、今でも忘れられません。
心が潤う瞬間を感じてみてください。