鎌倉トリップ「甘縄神明神社」
「鎌倉の長谷」と言えば、多くの人がイメージするのは「高徳院」の大仏様や「長谷寺」かもしれません。
けれど、実は長谷の一等観光地からは少し離れたところに、とても興味深い神社があるんです。
江ノ島電鉄「長谷」駅からは歩いて8分ほど。
住宅地の奥に、ひっそりと静かにこの町を見守る「甘縄神明神社」。
賑やかな町とはさほど遠くはないのに、とても静寂。
ホウっと落ち着く瞬間を感じます。
鎌倉幕府が栄える前から長谷を鎮守してきた神社で、源氏や川端康成とも縁がある鎌倉で一番古いとされているんです。
710年に行基(ぎょうき)によって創建され、由比の長者と呼ばれた豪族、染谷時忠が神明宮と神輿山円徳寺を建立したのがその始まりと伝えられている。
その後、源頼義公が神明宮に祈願して八幡太郎義家を授かったといい、源義家公が社殿を再建、ほかに北条政子や源実朝も参拝したという。
なんとも源氏とは深い繋がりがあるわけです。
甘縄神明宮のご祭神は天照大御神(あまてらすおおみかみ)
伊邪那岐尊(いざなぎのみこと)
倉稲魂命(うがのみたまのみこと)
武甕槌命(たけみかづちのみこと)
菅原道真公(すがわらのみちざねこう)
天照大神は、神様の住む世界を支配する役目をもってきたトップクラスの神さま。
あらゆる神徳をもつので、ご利益は、国土安泰、開運、勝運、福徳など、基本的には万能のご利益なんです。
かつては「伊勢別邸」として頼朝公の信仰も厚かったようです。
鳥居をくぐり、細い参道と長ーく続く階段の先には、鎌倉本来の静けさに満ちている境内。
一段一段を踏みしめながら、神聖なエネルギーをヒシヒシと感じます。
しぃぃんとした境内に足を踏み入れると、不思議と心が鎮まる。
葉の擦れる風の音。
だけ。
人の気配もほとんどない。
なんて静かなところなんだろう。
とても観光地だなんて思えない。
ふと振り返ると、進んで来た道はまっすぐ伸びて、その先に由比ヶ浜の海と鎌倉の町が見える。
これが古から、「甘縄神明神社」が見守ってきた地。
そしてこれからもずっと、変わることなく。
こちらの拝殿はドシッとした風格ある渋い佇まいに、ところどこと金を効かせた、ステキな造り。
私たちが拝むところが拝殿で、実は神様は神殿と呼ばれるところにおられるそう。
神殿とは、拝殿の後ろにある神様のおうち。
この神殿、人間より数段高い位置に祀られている様式は、古い神社にみられるもので、身近なところでは「佐助稲荷神社」も同じなんだとか。
そして神殿の屋根に注目。
屋根の面の部分に平行して入り口があり、屋根に覆いかぶさるようになっている造りを屋根に「平行」して「入り口」があるので「平入り」と言います。
一方、屋根の面ではない方向、屋根の「端」に「入り口」がある造りを「端入り(つまいり)」または「妻入り(つまいり)」と言います。
ちなみに屋根の上には丸太のようなものが5本置かれています。
この丸太を「堅魚木(かつおぎ)」と言います。
この「堅魚木(かつおぎ)」、建物が堂々として見える要素として一役買っていて、視覚的な安定感を与えるためであり、通常ならば神殿まで、なのですが…
この「甘縄神明神社」の拝殿の屋根は、少し反り返っていることで、威厳を醸し出し、更には「堅魚木(かつおぎ)」も配されているんです。
ということは、この地の人々がこの拝殿をとても大切に想ってきたというしるしなんですって。
少し珍しいことでもあるので、拝殿の屋根にも着目してみてくださいね。
冒頭でも触れたように、この神社は鎌倉の文学士である川端康成とも深い関係が。
甘縄神明神社の鳥居の真横に川端康成邸があるんです。
小説「山の音」の舞台ともなったことで、有名。
彼が実際に住んで感じた音を表現されているということ。
邸宅と作品の舞台が隣接だなんて、ますます感慨深い…
こんなに魅力たっぷりの神社なのに、何故か訪れる人はごくわずか。
知る人ぞ知る、感じが良いですよね。
この静けさが心地よくて、ちょっと秘密にしたくなります。
穴場的スポット、「甘縄神明神社」
まずは「山の音」読まないと!
とてもおすすめの神社のひとつです。