鎌倉トリップ 「浄光明寺」
鎌倉市扇ガ谷「浄光明寺」。
静かな扇ガ谷の住宅街の中にこじんまりと佇む「浄光明寺」は、真言宗のお寺さん。
足利尊氏とご縁があるんだそう。
…私、侮っておりました。
正直、そんなに期待はしていなかったんです。
看板だって、特に目立つところにもないんですもの。
だからきっと、地元の方がときおり訪れる、小さなお寺さんなんだろうなと。
「鎌倉」駅から歩いて15分ほど、小町通りの奥。
泉が谷とよばれるエリアにある、なかなかの隠れ里「浄光明寺」は、とても凛としていて、お手入れが隅々まで行き届いた、見所満載の素敵なお寺でした。
山門をくぐり、一歩踏みとどまって全貌を見渡すと、境内はとても美しい庭園が広がっている。
そして、「どどどーん」と堂々たる風格を表すは本殿かと思いきや、なんと「客殿」でありました。
無料公開エリアで、見られるのは、山門、楊貴妃観音の石像、客殿、鐘楼、不動堂。
それだけでも十分ですが、せっかくなので奥の階段も登ろうと思います。
源頼朝の願いで文覚上人が建てたお堂が始まりといわれる「浄光明寺」。
その後、鎌倉幕府御家人であり島津氏の祖である島津忠久が創建した寺を、鎌倉幕府6代執権、北条長時が再興したんだとか。
その際にこのお寺を祈願所に定めたという。
鎌倉幕府を倒幕した足利尊氏。
その尊氏が後醍醐天皇に謀反を疑われた建武二年(1335)、この寺に籠りました。
それがこの「浄光明寺」の客殿です。
その後、建武の親政から尊氏が離脱、反撃し、尊氏は室町幕府を開くのです。
知られざる歴史の背景が隠されているんですね。
山門から入って客殿のある1段目、本堂のある2段目。
さらに鎌倉石を削ってできた階段を登り、網引地蔵がある3段目と続きます。
面白い造りですよね。
その昔、数百人の僧侶たちが行きかう場所であった「浄光明寺」。
往時の盛大さをしのばせるのは、限られた土地を有効活用するため、このような造りにしたんですって。
奥にゆくほど、冒険気分が沸いてきて、「ワクワクドキドキ」。
石段は昔、鎌倉石を切り出した時のままで、幅がなくて怖い。
けれど、とても風情があります。
受付の方に、「先の階段は100段くらいありますからね。頑張ってください」と言われたので、それもまたハラハラ身構えていたのですが。
思ったよりはたやすく登れました。
良かった…。
そして、岩山の中には「網引地蔵」さまがおられ、てっぺんには14世紀の歌人、冷泉家のお墓がありました。
藤原定家の孫であり「十六夜日記」の著者でもある阿仏尼の子、冷泉為相のお墓。
歌道の名家、冷泉家(れいぜんけ)の始祖です。
お墓からは、美しい鎌倉の町が見えました。
これほど眺めのよいところなら、安らかに眠れそうですよね。
こんな素晴らしいお寺が、観光スポットじゃないなんて!
心穏やかにお寺を堪能できる…穴場です。
自信を持っておすすめします。