鎌倉さんぽ 「鎌倉十井 星の井」
「鎌倉十井」のひとつ、「星の井」。
江戸時代、水質に恵まれない鎌倉の土地において、質の良い水が湧き出す井戸は貴重な水源でした。
鎌倉十井(かまくらじっせい)とは、水質も良く美味で、伝説やいわれが残る鎌倉を代表する十基の井戸のことです。
さてさて、材木座、大町に続いてお次は鎌倉市坂ノ下に発見。
かつて、かの有名なドラマの舞台ともなったおしゃれなカフェや、鎌倉名物「権五郎力餅」で有名な力餅家、売り切れ御免、行列のできる高級食パンなど、魅力的なお店が点在する楽しいエリア。
別名あじさい寺、恋愛成就の「成就院」、鎌倉の西方極楽浄土と謳われ、花の寺としても有名な「長谷寺」、恐らく知らない人はいない鎌倉の大仏「高徳院」、など人気どころの神社仏閣も多いため、散策するにももってこい。
私も美味しいものを頂きたくて、ついついお仕事帰りに立ち寄ってしまいます。
さて、そんな場所に佇む「星の井」はどこなのかしら。
と、思ったら「どどん!」と発見。
鎌倉七口切通しのひとつでもある「極楽寺坂」の登り口、「虚空蔵堂」のお膝元にありました。
こちらはわりと大きくてよく目立ちます。
おそるおそる近寄って見てみると、大きな石碑には、伝説が刻まれていました。
この辺りは山深く、うっそうと木々が繁って暗いため、井戸を覗くと昼間でも星が輝いて見えたという伝説からこの名があるんだとか。
なるほど、だから「星」の井なんですね。
また、奈良時代の名僧・行基は、井戸から出てきた光り輝く石を虚空蔵菩薩の化身と思い、仏像を彫り、お堂を建てて虚空蔵菩薩を祀ったそうです。
その後、水を汲みにきた近所の女の人が誤って包丁を井戸に落とすと、星は見えなくなったとも伝えられています。
伝説とは奇なり、ですね。
奈良時代と行基が生きていた時代で重なるのは710年~749年なので、この約40年間の間のこと。
もしもこれが事実なら1300年も前には、既にこの井戸があったことになります。
しかも、井戸の水は昭和初期まで販売されていたというのだから、随分長く活躍した井戸ということでしょうか。
旅人が疲れと喉の渇きを潤すために、この地で美味しい水を「ごくごく」いただく。
そのシーンが目に浮かんできますね。
ふふふ、目を閉じて、タイムスリップしてみたくなりました…