鎌倉トリップ 「長寿寺」
鎌倉市山ノ内、通称「北鎌倉」。
鎌倉の喧騒から離れ、あふれる自然の中に静かに佇む古寺が多く、四季の移ろいを肌で感じられるエリア。
とかくたくさんの名だたるお寺が集まる町なのです。
その「北鎌倉」の中でも、誰もが知るポピュラーな寺院ではなく、穴場的なお寺を発見。
その名も「長寿寺」。
室町幕府を開いた、かの有名な「足利尊氏」ゆかりのお寺。
通年拝観できるわけではなく、秋と春の二回、限られた曜日だけ参拝可能という、季節限定のスポット。
このお寺を知っているなんていうのは「通」と言っても過言ではない。
「北鎌倉駅」から「建長寺」に向かう道すがら、扇ガ谷と北鎌倉を結ぶ「亀ヶ谷坂」という切り通しの登り口付近にひっそりと存する。
茅葺き屋根が素朴で愛らしい、山門までの階段を心穏やかに上る。
すっと山門をくぐると、そこは別世界が広がっていた。
こんなところに、これほど素晴らしい寺院があるだなんて、と驚くやなかれ。
まだ色づく前の青青しい緑たちが私を包み込み、「サワサワ」と風に揺れている。
丁寧にお手入れされた参道は、凛とした雰囲気でとても心地よかった。
1336年、足鎌倉公方の足利基氏が、父である足利尊氏を弔うために創建したと考えられているが、詳細は定かではない。
境内の奥地にはひっそりと「足利尊氏」の墓所も。
誉高い歴史上の人物のお墓を訪れると、いつも感慨深い気持ちになる。
対峙した瞬間、かつて活躍された偉大な方々のパワーを感じ、そしてそこに自分が佇んでいる不思議。
玄関を入って左手には、質素ながらも神聖な本堂とそして右手に小方丈、書院と繋がっています。
書院ではちょうど素敵な写真展が行われていて、菩薩像や地元鎌倉の寺院で撮影された美しい写真が展示されていました。
小方丈には鮮やかな緋毛氈(ひもうせん)が敷かれ、なんとも洗練された風格を醸し出している。
その座敷から眺める庭園は、本当に素晴らしく、私の拙い言葉ではたとえきれない優美さなのです。
時を忘れていつまでも見つめていたくなる…
人の手によって創られたものだとわかりながらも心が洗われる…
日本人の心というものなのでしょうか、そういったものが私の中にふつふつと沸き立ってくるのを感じるのです。
木造の書院や小方丈の重厚さ、観音堂の素朴さがすべて綺麗にお手入れされた庭と融和し、そこから醸し出される静寂な美しさは、我々見る人の心に安らぎを与えてくれるのです。
思わず「ふぁ…」ため息がこぼれました。
「キシキシ」と柔らかく軋む床、どこか懐かしい木の家の香り。
そういった類のものも、より一層私を心穏やかにさせてくれるものなのですね。
「長寿寺」、心からおすすめします。
今度は紅葉とのコラボレーションも観てみたいので、もう一度、今度は大切な人と訪れようと思います。